従業員数2,000人を超える規模のDX化推進。規模が大きい企業のDX化はそう簡単には行かない現状があると思います。
そんな中、今回は従業員数2000人超えの企業であるディップ株式会社にインタビューを行いました。
「バイトル」「はたらこねっと」「ナースではたらこ」等の有名求人サイトや、「聖地巡礼マップ」「AINOW(エーアイナウ)」などの少し変わったサイトまでを開発・運営しているディップ株式会社。
SaaSの導入背景や、実際の使用方法、他サービスと連携しての使い方など、どのようにDX化に取り組んでいるのかを特集します。
インタビュー先情報
会社情報
- ディップ株式会社
- HP:https://www.dip-net.co.jp/
「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」の企業理念のもと『労働力の総合商社』として、人材サービス 事業とAI・RPA 事業を提供しています。
2016年にdip AI.Labを設立し、日本初のAI専門メディア「AINOW」をスタート、続く2017年にはAIスタートアップ支援制度「AI.Accelertor」を開始、支援する会社の数は100社を超えています。
さらに、2018年に「dip Robotics」を設立し、当社内の業務を社員とロボットが協業することで、既に20万時間以上の業務効率化を実現しております。
このように最先端の知見をいち早く取り入れ、定型業務はデジタルレイバーに任せ、人には人らしい仕事をしてもらうため、”Labor force solution company”として、労働に関わる課題を総合的に解決してまいります。
インタビュー者:西野 翠様
ディップ株式会社 商品開発本部 次世代事業統括部 dip Robotics PdM課 リーダー
2014年4月、住友電気工業株式会社に入社。経理・営業企画を経て営業の見積システム開発に携わり、その経験からコーポレートIT企画・PMへキャリアチェンジ。
2019年2月にディップ株式会社にジョインし、現在は次世代事業統括部で全社システム導入や構築を企画・PMとして推進する。全社DX施策「カケザンプロジェクト」リーダーも務める。
導入事例
ジョブカン
導入背景
もともとディップでは別の経費精算システムを使っていました。
ただ導入から時間が経っていて、営業が求めているICカードで交通費精算できる機能が実装される見込みがなかったため、リプレイスを検討することになりました。
今までのシステムでは営業が移動した駅の区間や金額を手打ちして申請していたのですが、申請書を作成するだけでも多くの時間がかかってしまいます。
無駄な作業時間を削減し営業活動に集中してもらうため、ICカードから交通費情報を読み込めるシステムを導入しました。
使用方法
導入背景にあった経費精算と、稟議など社内の申請管理に使っています。
経費精算は、ICカードの情報を読み取るため用の機械を各オフィスに最低1台、人数が多いオフィスには4台ぐらい置いて、ICカードを読み取れる体制を作ってます。
稟議は、お金をなにかに使うときは「これぐらいお金を使います」と会社に申請するので、それの案件の管理に使ったりしています。
また、以前は稟議をあげたあとに改めて購買システムで購入依頼どを行わないといけなかったのですが、ジョブカンと購買システムのデータ連携をすることによって、二重で申請する手間を無くす取り組みをしています。
課題達成
営業が移動した履歴と交通費の金額を手で打って申請する必要がなくなり、平均で営業職1名あたり一ヶ月約30分ぐらいの効果が出ています。年間に直すと9000時間ぐらいになりました。
良かった点
検索性が良いです。過去に使っていたシステムが、検索するのに時間がかかったり、一覧性が良くないという問題を抱えていたので、そういった点が素晴らしいと思います。
権限の管理も、代理申請や代理承認の設定が簡単に連携できて良いと思います。また、人事システムとAPI連携させているので、人員異動の更新が自動でできています。
悪かった点
申請案件の内容のAPI連携ができず、CSVとRPAで連携させているので、はやくAPI連携ができるようになってほしいなと期待しています。
クラウドサイン
導入背景
紙の契約書に捺印して郵送する手続きをデジタル化するため導入しました。現在契約書のほとんどを電子化することを目標において実行しています。
リモートワークが進んで、捺印対応のために出勤することを減らしたく、去年法務部門から「各取引先に電子契約をお願いをしてください」と方針が出されています。
使用方法
紙の契約書とほぼ同じレベルで使用しています。ただし契約相手の了解を取る必要があるため全てではありません。
また、法務部門では契約書のバージョン管理をするシステムを使っていて、そこと連携させています。あとはジョブカンとクラウドサインの連携も検討しています。
課題達成
物理的な対応がなくなるので、単純にリードタイムがすごく早くなります。
紙の書類を郵送するとどうしても1日ずつ行き来にかかるとか、捺印の時間があるともっと時間がかかったりするので、おそらく紙で5日間ぐらいかかっていたたのが電子では1日2日ほどで済むようになりました。
良かった点
出勤しなくても捺印の対応ができ、書類の紛失の恐れもないですし、過去の契約の確認も取りやすいです。
悪かった点
特にありません。
Slack
導入背景
Slackを導入した背景は、コロナ禍でリモートワークが増えたのでオンラインで人と人のコラボレーションをさせたかったこと、社内のたくさんのシステムに散逸している情報をSlackを中心に連携をさせて、その結果営業の生産性をあげたいという狙いがありました。</p
ディップはもともとITツールを導入することに積極的な会社であったので、本当にたくさんのITツールが導入されています。
ただ、社員が困ってしまうぐらいにたくさんあり、例えば営業業務ではkintoneやOBICを見に行かないといけない、出勤するときは勤怠システムとコンディションシステムに入力しないといけない、労務管理システムはまた別にあるといった感じで、たくさんのものを見に行かないといけない状況です。
効率化のためにシステムを導入しているのですが、社員はついていくのに大変という状況があり、社内DXのプロジェクトとして「カケザンプロジェクト」と名前をつけて実施しました。
COOを中心に、ディップをもっとITで力強い会社にしていくぞという方針を打ち出し、データの連携や人と人のコラボレーション、そういったことを総称して「カケザン」すると呼んでいます。
使用方法
2020年12月に導入しました。社内コミュニケーションのために使っています。
また、開発面では、打刻のシステムが2つあるのをまとめるために、打刻用のSlackappを社内で開発し、1つの申請で済むようにしたりしています。
労働時間を登録するシステムと社員の体調を入力するシステムがあって、出勤時退勤時に2つのシステムに情報を登録しないといけなかったのですが、Slackに窓口を1つにまとめて、1つのフォームに全部の情報を入れてもらい各システムにその情報を連携させています。
課題達成
現在は全社員の80%がSlackのアクティブユーザーで、社内のオンラインコミュニケーションはほぼSlackに集中しています。
先ほどの打刻システムは好評でした。これからは車内社内にあるシステムとの連携をどんどん進めていこうと考えています。
いままでは営業のCRMシステムに登録された内容がメールで通知され、課長がその情報をもとに部下に指示をだしていたのですが、をSlackに連携させることによって、よりリアルタイムに指示が出せるようになる機能を企画しております。
良かった点
メールが圧倒的に減りました。また、会議の数が減った、会議時間が減った、会議の質があがった、報告のリードタイムが減った、意思決定のスピードがあがったという声もきいています。
チャットが基本でで返事がしやすいですし、メールのように文面を整えなくていいので、聞きたいことをすぐに聞ける、報告したいことをすぐに報告して指示をもらえるなどマネジメントの効率化ができていると思います。
悪かった点
Slack自体の悪い点ではないのですが、2500人超えで1つのワークスペースを使っているので、チャンネルの数がすごいことになっています。
今までははSlackを部署ごとで自由に使っていて、20人〜多くて200人単位だったのが、このプロジェクトを機にいきなり全社で使うことになったためです。
慣れない人がチャンネルを乱立させてしまったりしているのを交通整理をしていて、会議を減らしチャンネルも減らそうというアナウンスをだしています。
また、発信する側は情報を見てほしいと思って発信していても、受け取る側が処理しきれていないし、発信する側が期待するほど受け取る側は読んでいない、重要だと思われなければ読まれない。
これはメールでも同じ問題があった部分が顕在化したものだと思うので、コミュニケーションの再検討が課題です。
Backlog
導入背景
Backlogに関してはあらゆる部門でプロジェクト管理のために使っています。システムの部門で主に使い始めたのが、人事や経理に広がった形です。
関連部門と一緒にプロジェクトをすすめるために使っています。
バイトルの開発、はたらこねっとの開発から、社内にシステムを導入するプロジェクトまで、広くプロジェクトに参画するメンバーで活用しています。
使用方法
プロジェクトを推進する上では必要不可欠なシステムです。
プロジェクトの動きを把握するため、タスクごとにチケットを切ってこれの課題は終わった・終わってないなど課題のやり取りをしています。
今の進んでいる案件がどれぐらいあって、いつまでにやりますっていうようなガントチャートが簡単に引ける機能を多用しています。Wiki機能で開発する機能の要件を書いて共有しています。
また、Backlogが更新されたらSlackに通知が来るようにしています。
良かった点
プロジェクトを推進する上では必要不可欠なシステムです。
プロジェクトの動きを把握するため、タスクごとにチケットを切ってこれの課題は終わった・終わってないなど課題のやり取りをしています。
今の進んでいる案件がどれぐらいあって、いつまでにやりますっていうようなガントチャートが簡単に引ける機能を多用しています。
Wiki機能で開発する機能の要件を書いて共有しています。また、Backlogが更新されたSlackに通知が来るようにしています。
悪かった点
特にありません。
カオナビ
導入背景
評価を会社全体でやっていて、この人は今期こういう目標でこういう実績があったという情報収集ツールとして使っています。ワークフローにのせて質問内容を打たせていくことができるので、アンケートにとても向いているツールです。
使用方法
前述した評価の情報収集に加え、ディップでは月に一度上司と部下の1on1ミーティングをやっていて、部下にまず面談内容を登録してもらい、上司の所感を入れる等で使ってます。
また、人事が社内の募集事項の対応に利用しています。例えば研修の参加管理や、他の部門の人との面談、他の部門への異動要望の収集などです。
良かった点
上司あてに部下が回答した内容を上げ、上司が追加でコメントを回答し、吸い上げた情報を人事が集約して確認することができるので、情報のマネジメントができる点が良いと思います。
弊社ではアンケートフォームとしての面が強いです。Googleフォームだとステップを踏めないという問題があります。
例えば、上司がコメントを入れてから人事に送ることができないので、それができるのはすごく良いと思います。
悪かった点
人事情報のメンテナンスが大変という話を人事から聞いています。
レコリン
導入背景
もともとパソコン版のCRMシステムがあったのですが、営業は外回りが多いのでiPhoneで使えないと意味がないということで、「ディップの営業が本当に求めているものは何か」をより深くヒアリングして内製したアプリです。
開発者が現場に行って、営業活動は普段どんなことをしていて、どういうことを管理したいのかを把握して機能に反映させています。
使用方法
顧客リストの管理に使っていて、顧客といつ接触し、どういう反応だったかという内容を保存しています。
また、商談をしているのか、受注は取れたのか、トライしたけど失注してしまったのかなどフェーズの管理をしています。また、「今日アプローチするべき企業」のような提案をAIを使って行っています。
良かった点
営業の手帳に書いてあって個人でしか把握していなかった情報を、広く他の人にも伝えられるようになり、上司と連携も取りやすくなりました。
手元管理では難しかった、顧客がどのフェーズにいるのかを管理できる点も良いと思います。
悪かった点
内製のアプリで工数が限られているので、優先順位をつけて開発しているため、全ての要望に応えきれてはいないです。
気になった点についてご質問させて頂きました!
Q.2,000人超えの規模でのDX化ということですが、人数による障壁などはありましたでしょうか?
社内DXのプロジェクトとして「カケザンプロジェクト」を推進してきました。人数が多いことにより足並みが揃わないことはもちろん多少はあります。
ただ、このプロジェクトは全社で取り組んで成功させるため、全部門の執行役員をアサインしている大きなプロジェクトです。
また、各現場にDXアンバサダーを設置して、部門のツールの活用を後押しするような取り組みも行っています。なので、全社一丸となって頑張ろうという雰囲気で進めることができています。
最後にDX化に取り組もうと考えている方にアドバイスを一言お願いします!
DXは闇雲にツールを使えば良いわけではなく、その活用の先にある業務効率化や生産性の向上を目指すべきだと思います。
なので、導入したいツールをまず提案するのではなく、今何に困っていて、課題を解決したくて、だからこのツールを導入するのだという観点が必要だと思います。
ただツールを導入しますと言うとどうしてですか?ってなりますけど、全社員こんなことに困っている、インタビューの結果具体的にこんな困りごとがあって、こんな改善をするために、このツールを導入しますと言った方が、納得感があり予算を獲得しやすいと思います。
SaaS導入における大事なこと
今回インタビューをさせて頂き、DX化促進をしていくにあたり背景をしっかりと考えることと、組織体制の大切さを改めて感じました。
DX化が流行っているからうちでも取り組もうよという姿勢はとても素晴らしく大事な点ですが、とにかく入れてみようという試みはあまり良く無いなと感じます。
しっかりと、今の会社の現状を分析し、どこに課題がありどのような施策を打つとその課題が改善されるのかを考えることが最も大事だと思います。
今回、ディップさんは営業ツールでは外部ツールを使うのではなく自社で内製し、利用していました。
このように、規模が大きくなると必ずしも外部ツールが一番の効率化ではないのかなと思いました。また、規模が大きくなると、組織体制も考慮した方が良いのかなとも思いました。
ディップさんのように部門に一人DX化を促進する担当を付けたり、新しいツールを浸透させる担当者を配置することも有効な手段だなと感じました。
大きな規模になればなるほど、足並みをそろえて改善していくというのは難しいため、うまく組織化して体制を作れる会社が成功を収められると思いました。
ぜひ、積極的に挑戦しDX化の一歩を踏み出す参考になれれば幸いです。
この記事に登場したSaaS
ジョブカン
初めてでも、誰でも、簡単に使える、業界No.1の勤怠管理システム。
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クラウドサイン
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契約書だけでなく、発注書・請書・納品書・検収書・請求書・領収書など、さまざまな対外的なやりとりに利用ができる。
Slack
代表的なコミュニケーションツール。様々なサービスと連携が可能で、社内コミュニケーションツールとして多数の会社が導入。
Backlog
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レコリン
「レコリン」とは、営業活動を効率化することを目的に開発されたCRMアプリです。営業社員の手帳を再構築するコンセプトで開発されていて、テレアポ、顧客リスト管理、商談内容管理などの営業活動にかかる全ての業務を1つのシステム上で運用ができます。
また、営業社員の登録した顧客データを特徴に機械学習技術を用いて、データ最適化を行い、今日訪問すべき企業をプッシュ通知で提案してくれます。