最近では「DX」は当たり前のようにニュース記事などで見られるようになりましたが、導入して生産性を上げている・上手く部署事に使えている内容のものは多くはありません。
そこで今回は、導入時の注意点やポイント、そして実際の気づいたことなどをブランディングテクノロジー株式会社様にインタビューにご協力頂き、伺いました。
これからDXを考えている方のご参考になれば幸いです。
インタビュー先情報
- ブランディングテクノロジー株式会社
- HP:https://www.branding-t.co.jp/
2001年創業、2019年東証マザーズ上場。「ブランドを軸に中小・地方企業様のデジタルシフトを担う」をミッションに掲げ、ブランド事業・デジタルマーケティング事業・オフショア関連事業を展開している。
インタビュー者:ブランディングテクノロジー株式会社 DX推進室室長 石井大輔様
前職にて、企業向けの業務システム系の開発・運用・コンサルティングを経験し、2015年にブランディングテクノロジー入社。クライアント向けの広告運用事業の営業所長、デジタルマーケティング分野のサービス改善・業務効率化のプロジェクト責任者を経て、2020年より現職。自社内の生産性向上や意思決定プロセス改善をテーマに、SFA基盤の最適化や広告運用ビッグデータのBI構築、経営指標データの統合基盤構築など、複数のDXプロジェクトを推進。
ブランディングテクノロジー株式会社 経営戦略室 和田裕史様
前職にて、企業向けブランディング書籍の編集者を経験し、2015年にブランディングテクノロジー入社。現在は経営戦略室所属のコピーライターとして、自社ブランディングやクライアントのブランディングに携わる。また、広報やIRなどの対外的な発信を行うことで、自社のブランド価値を上げることをミッションとしている。
生産性だけでない!データの見える化で改善!(HRBrain)
導入背景
まずシンプルに人事に関してはMBO(目標設定型)ですね。
以前は人事の管理をエクセルベースでやっていましたが、エクセルだと評価の履歴が追えずに、短期視点で評価してしまう課題を感じていました。
評価をデータ化することにより、適切な評価がしやすくなり、評価の履歴と照らし合わせながら上司と部下がコミュニケーションを図ることで、成長や変化を見える化するために導入しました。
使用方法
基本的には目標設定として使ってます。
もう一つが従業員とのコミュニケーションです。
交換の時期に合わせたコミュニケーションだけだとどうしても評価が適正にできないということがありました。
一対一のコミュニケーションを毎月1回やりましょうと話をしてます。
そのコミュニケーションのログなんかも記録するようにしているので、長期視点での評価ではなくて短期視点でもコミュニケーションを取ることによって、部下のモチベーションも含めてログが残せる状況にしています。
課題達成
今までローカルのエクセルファイルでやり取りしていたので、データが一元化され、生産性が上がったことがまず一つです。
あとはログが見えることによって、前回の評価の振り返りがしやすくなったところがあるので、生産性をあげているのかなと思ってます。
もう一つはこれからですが、人事系の情報のデータベースとその評価データを連動してあげることによって、評価の適正ががあっていないという可能性があります。
この場合「評価されないから給料さげる」ということが起こってしまい、それが退職の方向に向かってしまいます。
評価できない、されなかった人材でも部署を変え、人の流動性を作りやすくするためのデータを作れる可能性が出てくるので、あと2、3年運用を続けていきたいと思っております。
良かった点
石井様
生産性が上がったところと一元管理され、いちいち過去データ探しに行くこともしなくて済む。
多分この次の段階がDXのポイントになってきますが、入れて生産性上がるだけではDXじゃないと思っています。
新しい意思決定とか今まで出来なかった事ってところが当社にとっての付加価値にあると思います。
人の流動性を高めているとか、適材適所での配置とかができていくための情報になればいいなと思っていますね。将来的な話になってきますが。
和田様
評価する側がちゃんと評価するようになったっていうのが一つあるかなと思います。
導入前は人によってまちまちでした。
毎月一回の面談をしていなかったり、提出直前にまとめて適当に書いて出す人も正直居たりしたんですよ。
でもを導入することによって、見えるようになったのでちゃんとやらざるを得ない環境になったところがあって、そう言った意味では改善されました。評価する側の意識が変わった感じです。
悪かった点
特に感じていないですね。
無駄作業をなくし徹底的に一元管理(ジョブカン)
導入背景
シンプルに無駄な作業が多かったので、効率化するために導入しました。
使用方法
採用周りなどに使用しています。
課題達成
中途および新卒もそうですが、その採用における面接周りのプロセスが一元管理されているところです。
チャットで履歴書や業務経歴書が展開されていて、情報が流出するリスクがあったり、過去ログが取れないところが出てくるので、そこが一元管理されて生産性が上がっています。
良かった点
課題達成と同じく、面接周りのプロセスが一元管理されているところです。
悪かった点
ユーザーインターフェイスが改変できないところですね。
HRbrainはある程度調整して項目変えたりだとか、その評価する上でのウエイトの設定とかをいじってくれるので、運営に適したカスタマイズしてくれるというところは非常に助かってるんですけど、ジョブカンはその辺ができない点です。
残業に対する考えの改善(KING OF TIME)
導入背景
入退室管理や勤務表を管理をするためにもともとは一番最初はエクセルでやってました。
効率化しましょうと言うのがシンプルな導入背景ではあるんですが、KING OF TIMEの前はまた別のシステムを使ってました。
担当者がいなかったのでなぜ変更したのかは分からないですが、当社の入退室の管理自体が各拠点によって違います。
入室したら出勤したという連動を図るために、今はで入退室管理をしています。
カードをピっとしたらあとは。Akerunのこのシステムと連動したいところもあったので、そこと連動できるサービス、に変えたところはかなり大きなメリットになりました。
使用方法
入退室管理Akerunのサービスと連携して出勤の管理も同時にできるようにしている。
課題達成
22時以降の深夜残業を軽減できたところです。
弊社は、22時までには帰らなきゃいけないという規則を設けています。
今までだと申告制で、何時に仕事が終了したかを管理してましたが、単純に退出の情報と連動させれるので、不正利用はできなくなります。
今までは残業が結構多かったのですが、その意識が芽生えてきたのかなと言うところで深夜の残業時間は予想より制限されて改善できた点だと思っています。
良かった点
申請の効率化ですね。
月末閉めで、月初には勤怠データ出さなきゃいけないですけど、入退室のログが残っているので、何時から何時に来て何時に帰ったことを記録する必要ががないので、だいぶ生産性上がりました。
悪かった点
システム側の問題になりますけど、UIに慣れないといけない。
ちょっと使い勝手の観点とか、有給取る申請あげなきゃいけなかったりとか、打刻データが間違ってる時に修正しなきゃいけなんですけど、その時のUIが人によって『使いやすい』『使い勝手が悪い』と言ってる人がいます。
慣れの問題であるんですけども、うちの会社のそのリテラシーとITリテラシーのレベルが合ってるか合ってないところ見るともっとシンプルでもっとわかりやすいUIの方が良かったかなとも思います。複雑な所がありますね。
集計作業を不要にし、機能で分析も可能!(Yellowfin BI)
導入背景
今まで使用していたデータが広告のダッシュボード運用型広告のデータをレポートでまとめてお客さんに提示する必要があるんですけど、そのレポーティングが今まではレポートツールを使ってエクセルでエクスポートし、エクセルデータをお客さんに渡す事をやっていました。
しかし、人の手がかかってしまうところなので、そこをなくしましょうという目的で導入しています。
そのデータレポート作る作業を減らすという観点だけであればTableauさんやDomoさんの様な色々なダッシュボードツールがありますが、Yellowfinを導入した理由としては、ただデータをまとめてとか、仕事して見せるって言うの部分だけじゃなくて、アナリティクス機能が付いているので、中のデータを統計的に全て分析にかけてくれて、『こういう傾向があるよ。』とか、アラート上げてくれたり等、この点に関してはYellowfinが優れています。
単純にまとめるだけじゃなくてそのプラスアルファでデータを活用してもらうので、人が運用しなくてもAIで回してくれる方が会社的にはYellowfinが良くフィットしているかなと感じました。
使用方法
Yellowfin側のデータをGoogleのBigQueryに渡して、データが蓄積しているYellowfinだけではなく、他のデータがレポートしたいフォーマットに合わせたところにデータが活用できる状態を作れたので、データのトランザクションコストが下がりました。
広告の管理画面からデータを出さないといけないなどの手は全くかからなくなりますし、レポートにまとめると集計作業が不要になりました。
課題達成
Yellowfinに関しては導入してまだ数ヶ月単位なので、今のフェーズでいくと活用促進のフェーズです。
一部はまだレポートツールでレポートを書き出し、Yellowfin側で一部見えないデータがあったりするので、そのデータを他の今までの手順で作業するメンバーがいるのですが、そこを全て移行できればと思います。
まだ道半ばではあります。
良かった点
今までは付加価値を生み出すべきじゃないところに時間をかけてしまったところが多かったのですが、そこが削減されたことです。
パワポの月次資料まとめるとかは正直そこは付加価値が出ないです。
そこの時間が削られることで例えば分析時間かけられますだったりとか、ユーザーが気づけないデータだとか、いまのレポートだけでは判断できなかったとこに対してデータの意味的な分析ができたり、仮説を立てることができたりとか時間をかけることができるようになると、お客様に対する付加価値が上がるという事になるのでそこからも大きなポイントかと思います。
悪かった点
BIツールの中で、日本ではマイナーな方というところ。Yellowfinは、TabeauとかDomoとかに比べると機能は優れてるが、構築のし易さでは少しマニアックです。
立ち上げの当初の部分で時間かかったことと構築作業をする人の育成に時間がかかりました。
正直、今は構築できる人が一人しかいない状況なので、できる人を増やしていかないとですね。
新しいダッシュボード作るにしても時間かかってしまい、属人的になってしまってるのでそこが課題です。
もう一個の課題としては、UIとしては見なれないというところがあるので、その辺りを上手く改善すれば導入がさらに促進されて、極端な話もうエクセル触りませんみたいな環境まで行ければと思っています。
難しいと思うんですけど、必要なデータは朝来てその画面立ち上げたら必要な情報は全部見れ、それを元に「分析をしてくれ」とか「考察をしてくれ」とか、「新しい戦略を考えてくれ」とかっていうところに時間をかけられればいいかなと思います。
日本国内ではマイナーなので、UI部分がなんか慣れないって所と、構築する人が育成ができないな所を大きな課題として見てるところがあります。
プロジェクト破綻を無くすために(Backlog)
導入背景
部門ごとに今まで様々なタスク管理ツールを使用していたりとか、全くツールを使わずにエクセルやスプレッドシートで管理される人がいたりとか、コミュニケーションツールを使用してタスク管理であったり等統一ができていないのが現状でした。
必要によって様々なところを会社と共通のプロジェクト管理ツールが必要だと思ったのでBacklogを導入しました。
値段も比較的お手頃でしてそこで問題が生じることもありませんでした。
使用方法
まだ連携はしていなく、単体で使っています。お客様との仕事が多いので、共同のプロジェクトやタスクの管理をする形で使うことが多いです。
あとは社内ですと、タスクの定義をそこまで明確にしなくても仕事が進めてしまえるので、Backlogを使わずにコミュニケーションツールやエクセルでタスク一覧を作成し進捗管理するみたいなことが多いです。
課題達成
ツールそのものの価値になるんですが、タスクの抜け漏れが無くせるところです。
アラートが出せる機能があり、それを活用すると今のプロジェクトの進捗レベル、進捗具合、さらに逆算した時に「プロジェクト破綻するかも」という様なアラートが出るので、プロジェクトの今のリソース分が足りないけどリソースを追加してでも進めなきゃいけないようなことなどが分かります。
まともな意思決定もしやすくなったところがあります。
良かった点
タスクの抜け漏れがなくなりました。
まだ完全にBacklogのフル活用が出来てるかって言うと、そうではないのですが、導入する人を増やすとか、Backlogを使うプロジェクトを増やしていければもっとより恩恵を受けれるのではないかなと思ってます。
悪かった点
Backlogはあくまでも最終ゴールが決まってる開発系の案件だったりとか、ちょっとしたWeb制作の案件だったりとかってところでゴールに向かって使用すれば、非常に使い勝手もいいのかなと思います。
そういった類じゃない、ずっと日常でタスクが生まれてタスクを管理するようなケースでは煩雑な管理になる傾向があるのでそういったものに関してはBacklogを使ってくれないケースのほうが多いかなと思います。
受注の見込みを見える化!(Salesforce)
導入背景
営業の商談の管理状況や受注見込みなどを管理、パイプライン管理ができてなかったため、ある程度営業の稼働の見通しを含めた稼働管理をしたかったので、Salesforceを導入しました。
使用方法
主にパイプライン管理です。
あとはその手前の段階ですと、マーケティング活動のリードの管理、リードから営業に、営業売上の貢献度合いをチャネル別に見たりや、どの経路で来た商談なのかという管理もしていたので、営業の前半のプロセスが可視化できるようになったところが大きいなと思っています。
あとは社内の仕組み上、納品する系のサービスに関しては受注しただけではなく受注後の納品のトリガーの管理もやっているので、売上の計上するタイミングの管理ができることや、受注だけではなく売り上げの見込みまで管理できるように使用しています。
課題達成
受注の見込みが見えるようになったことと営業のカードが最適化できるようになったことです。
見込みが足りない時の営業は「稼働量上げていきましょう」などの意思決定が早くなったり、そういうところが秀でてるので、見込みが低い時の営業稼働の上がり方が目に見えて良くなったなところがあります。
あとは受注の管理だけじゃなくて、売上見込みまで見えるようになってるので、今の売上見込みを考えたらもっと受注量増やさなきゃいけないのと、受注の読みだけじゃなく、売り上げの読みからも少し営業稼働を増やして行こうとか、もっと最適化して行こうとかの意思決定を行えるようになったのが大きな変化点かなと思っています。
良かった点
管理の最適化、仕事の見える化、データによる状況判断ができるようになり仕事の効率が上がった
悪かった点
Salesforceはもう少し安くして欲しいなと思いますね。
値段が高いので、人数が多いとどうしてもランニングコストがかかってきます。
あとは、ダッシュボードがちょっと使い勝手は良くないなと思っています。
改善されればもSalesforce単体で済むので、その辺りが良くなってくるといいなと思っています。
最後にDX化に取り組もうと考えている方にアドバイスを一言お願いします!
石井様
そうですね、弊社のDXは今季からDX推進みたいな形で進めてるのですが、難しいところは『ツール入れてどうにかなるものではない』というところが本当によく言われてるところです。
社内政治向けのDXに関してはまさにそれかなと思います。
DXを各一部門だけで行ってもあまり価値は無く、経営判断とかにまで行かないといけないと思うと本当に部門横断でコミュニケーション取って行かないといけない。
且つ部分最適を行ってしまうと、やっぱりどこかで齟齬が出てしまうところがあるので、一本ちゃんと軸を置いて、部門に対してある程度イニシアティブをとれる組織、DX推進組織を作らないと失敗するかなというのは、実際にやってみて思っているところではあります。
和田様
自分からは丁寧な説明や導入のメリットを伝えないと導入されただけで終わり、結局使わないで活用できないまま終わってしいます。
『このツールによって何が達成できる』、『どういうメリットがある』がないと現場としては余計な仕事が増えたとマイナスに受け止められかねないので、そこらへんの丁寧な説明のところはすごい大切かなと思いますね。
DX化のポイント・注意点
必ず製品比較を!
これからDXを推進するにあたって、どうしても機械が苦手な方が存在します。
できるだけユーザーインターフェースがあっている、わかりやすいものを比較検討することをお勧めします。
導入しただけで終わってしまっては意味がありません。
メリットデメリットの丁寧な説明が必要
健康製品のように、メリットを知るとプラシーボで効果が大きくなるように、SaaSも同じようなことが言えます。
確実に分かるように丁寧な説明が必要です。
一つの部署だけではあまり効果を発揮できない
部署を横断して初めて大きな恩恵が期待できると感じます。
せめて連携できるツールを選ぶなど、必ず他部署とのコミュニケーションをとるように心がけてください。
この記事に登場したSaaS一覧
HRBrain
「HRBrain」は人事評価から人材データ活用・タレントマネジメントまでカンタン・シンプルに戦略的な人事を実現するクラウド人材管理システムです。
ジョブカン
ジョブカンとは、インターネットに接続するだけで勤怠管理とシフト作成が同時に行える、クラウド型の業務支援システムです。
複数拠点の勤怠データをリアルタイムに確認・集計・抽出ができ、給与支払いまでの業務を簡素化、迅速化します。
KING OF TIME
KING OF TIMEはいつでもどこでもリアルタイム集計可能なクラウド勤怠管理システムです。
勤務時間を短縮し、コアタイムを増加。
勤怠時間の見える化、遅刻、打刻忘れ等、未確定勤務の判別がシンプルになり、 業務の簡素化に貢献できます。
Yellowfin BI
Yellowfinはインサイトの発見・共有方法を変革するの戦略的エンタープライズスイートです。
あなたのビジネスに最高の意思決定とデータ変化への迅速な対応を可能にします。
Backlog
Backlogとは、大規模な戦略計画をサポートするために必要なプロジェクト管理ツールです。
開発者からマーケティング、人事、総務など幅広い職種で使用されているツールです。
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