業界や業種に関係なく、さまざまな企業が推進しているDX化。誰もが一度はDX化という言葉を耳にした経験があるのではないでしょうか。
しかし、耳にした経験があっても、具体的に自分の関わっている分野でどのように活用できるのか、想像がつかない方も多いと思います。
そんな中、今回は不動産業界で45年以上もご活躍されている株式会社フラット・エージェンシーにご協力いただき、お話を伺いました。
インタビューでは、社内でのSaaSの導入背景、実際の活用方法にくわえて、スムーズにDX化を進めることができた秘訣も詳しくお聞きしました。
インタビュー先情報
会社情報
- 株式会社フラット・エージェンシー
- HP:https://flat-a.co.jp/
「地域に必要とされ・地域に貢献できる」会社づくりを目標に1974年に創業した会社です。
京都市北区に本社を構え、不動産の仲介やその管理から業務を開始しました。現在は14校ほどの京都市内の大学や専門学校と業務提携し、学生の部屋探しも行っています。
さらに、不動産、賃貸業務だけでなく、地域の困りごとを不動産の立場から何かできないかと考え、現在少しずつ活動しています。
例えば、高齢者の方が集まれるコミュニティカフェの開設、空き家問題への対応です。また、京都の芸術大学を卒業された学生が卒業後も活動できる施設の提供も行っています。
インタビュー者:中川桂一様
株式会社フラット・エージェンシー専務取締役
1996年株式会社フラット・エージェンシーに入社。
入社当時より事業を支え、現在は専務取締役として、地域に貢献できるサービスの提供や社内のDX化を推進している。
導入事例
物件や予約完了の情報共有が瞬時に行えるように!(kintone)
導入背景
もともと物件の予約表は、一般的なブラウザのガントチャートを使用していました。
しかし、ウィークリーマンションやマンスリーマンションなどの短期マンションの予約は複雑で、ガントチャートでは対応しにくい部分がありました。
そこで、短期マンションの予約表や予約管理に使用できるものは何かないか考えはじめたのが最初です。
なかでも、物件の情報を貯ることができ、他のソフトと連携し、なおかつスタッフと情報をすぐに共有できるものを探すことにしました。
最終的には、kintoneとエクセルを連動させ、物件の予約表を作ることで解決できると考え、kintoneを導入しました。
使用方法
導入背景にあった、マンスリーマンション、ウィークリーマンションの予約表に使用しています。その後、現場確認にもkintoneを導入しました。
例えば、部屋の清掃後、スタッフにその場で写真を撮影し保存してもらいます。そうすることで、こちらに通知が届き、写真の確認が行えます。現在では、出勤簿や残業申告などの勤怠管理もkintoneで管理しています。
課題達成
導入後、今まで個別にエクセルで持っていたファイルがかなりあぶりだされました。現在は、必要なものはkintoneで管理することができています。
良かった点
金額的な部分や使い勝手も含めて、中小企業にとっては、kintoneは使いやすいと思います。エクセルで個別に対応していたファイルなどのあぶり出しに成功しました。
悪かった点
特にありません。
業務と連動した会計システムを期待して(freee)
導入背景
現状使用している会計ソフトではスタッフがお金の流れの細かい仕訳の入力をすることがメインになっています。
なおかつ、その仕訳結果を分析に使えないところに無駄を感じていました。freeeはkintoneと連動ができ、業務と一体となる機能があることで導入を決めました。
使用方法
kintoneと連動ができるので、わざわざお金の流れを記録するというよりは、実際の業務の流れの中で自動的に仕分けが保管されていくような形にならないかと考えています。
例えば、賃貸仲介の誓約の情報を取り込むとそのまま取引として発生するなどを期待しています。
今はまだテスト運用的にfreeeを使用しておりkintoneとAPIで連携しておりません。2021年4月からエクセルデータからの仕訳のインポートを止めて、kintoneとのAPI連携に切り替えます。
もともと賃貸物件の紹介を主とする不動産会社ですが、現在はさまざまな業務が増えています。その為、業務フローとデータフローがなかなかできていません。
マンパワーでやってしまっている社内の業務を業務改善を行いながら、freeeの完全導入にむけて整理をしています。
課題達成
テスト運用で使用しており、完全移行前なので特にありません。
良かった点
すでに導入しているkintoneと連動が可能な点です。まだ、テスト運用段階ですが、実際の業務の流れ中で自動的に取引の仕分けがfreeeに保管されていくことを期待しています。
悪かった点
特にありません。
気になった点についてご質問させて頂きました!
SaaS導入において工夫した点をお教えください!
いきなり全部署で導入すると、社員の困惑が生じるので、最初は一部の部署でkintoneを使用することにしました。
そうすると、他の社員になんとなくあの部署で面白いことをしているな、と印象付きます。そのあと、全社員に向けて社内発表を行いました。
社内発表を通して、他の社員のkintoneへの理解を深めたうえで、勤怠管理をkintoneで行い始めました。そのため、出勤簿や残業の申告がすべてkintoneを使用することになります。
それゆえに、どの社員もkintoneを触らざるを得ないという状態になり、すべての社員が使用できるようになりました。
今後の課題をお教えください!
やはり、業務フローとデータフローの徹底が目標です。まだまだ、紙作業の部分がたくさんあります。また、パソコンに二度打ち、三度打ちしているような作業もあります。
部分部分にはアプリを作って便利になっていますが、まだフローの流れに淀みがあると感じます。その改善を行いたいと思っています。
今後進めていきたいDX化はどのようなものですか?
不動産の業務はIT化が遅れてるといわれている部分があります。例えば、京都にお住まいになっていると礼金、敷金、更新料、契約の仕方などが地域によって違いがあります。
不動産の業務ソフトは、作りが古い場合やそれぞれの地域に合わせてカスタマイズされていることが多いです。したがって、情報のつなぎ込みなどが全くできないことが多く、困っています。
今後は、そのようなソフトの乗り換えや、そのソフトの情報を全てkintoneで一元管理していきたいです。また、集めた情報はデータ分析を行うなどして、活用したいと思っています。
今後行っていきたい事業はありますか?
Amazonなどに慣れてる人たちが多いので、同じぐらいの感覚で不動産契約をできるようにしたいという気持ちはあります。
地域慣習もあり、賃貸でも契約するまでに署名と捺印が4~5回はあります。住所も何度も何度もお客様に書いていただき、わざと手間がかかるようにしてるのではないかと思われるぐらいです。
そのような部分は、今後なくすようにしていきたいと考えています。
最後にDX化に必要な視点やアドバイスを一言お願いします!
ユーザーの視点を忘れないようにすることが大切です。普段、自分たちがユーザーとして利用している時に不便だと感じても、反対側の立場になると今までのやり方をお客様に押し通してしまうところがあります。
ですが、その考え方をやはり変えないといけないと思います。
ユーザーと同じ立場になって考える視点を
今回は株式会社フラット・エージェンシーで行われているDX化についてご紹介しました。インタビューを通して、物件の種類が多様化している不動産業界の現状、今後の展望を知ることができました。
DX化が遅れている業界だと考えられているからこそ、今後の展望や課題の内容が豊富で興味深いものばかりでした。
また、DX化の推進には、単にお客様の視点を考えるのではなく、SaaSを使用する社員の視点も考慮して導入することが大切です。
株式会社フラット・エージェンシーは社員の混乱や困惑を想定したうえで対策をとられていました。段階を踏んだうえでSaaSを社内に全面導入することで、見事DX化を成功されています。
「自分がユーザーの時に感じるもの・視点」を大事にすることがスムーズなSaaS導入、DX化推進の秘訣だと考えられます。
この記事に登場したSaaS
kintone
kintoneは、データベース型業務システムです。顧客管理からセミナー管理、申請業務などの業務に対応しています。チームメンバーと情報共有が簡単にできます。
また、機能を拡張することが可能で、slackやfreeeなどと連携ができ、業務の幅が広がります。
良い口コミ
特にITに詳しくなかった職員でも効果を上げることができました。電話などの問い合わせから、ホームページを通じての問い合わせにうまく移行でき、効率化が進みました。
悪い口コミ
全文検索機能が使いづらいです。また、使いこなせないと、コストが高くなりがちです。
参照:IT review
freee
freeeは、簿記や経理知識がなくても分かりやすく、すぐに使用できるクラウド会計ソフトです。
自動入力機能も搭載されており、会計管理がより簡単になります。また、チャットや電話でのサポートが充実していて、導入後も安心して使用できます。
良い口コミ
とにかく工数が削減されました。会計freeeでは打ったものがそのままCSVで吐き出されてネットバンキングで読み込まれるようになり、ミスがなくなりました。2回転記する必要もなくなりました。
契約書や請求書を作製する上での手間が省け、効率化が進みました。
悪い口コミ
特に問題はありません。あえていうなら、レシートや領収書の読み込みが遅いのと読み込み枚数に制限がある点です。
参照:IT review