「kintoneを試験的に導入してみたところ、いくつかの部署で現場の特にITに詳しくなかった職員でも効果を上げられた。」「5千枚以上の紙を使用していて、1枚1枚全ての紙に判子を押して等、膨大な雑務が発生していたが、kintoneを使うことによって必要とされる紙の数が0となった。」「気になったことをその場で解決できたら便利なので、チャットボットを導入したい。」
こう仰っていたのはインタビューにお答えしていただいた、神戸市役所の藤原慎之輔様です。
膨大な業務を毎年抱える役所の業務に対して、SaaSの一種であるKintoneの導入でどのような成果が出たのかを以下にまとめました。
インタビュー先情報
会社情報
- 神戸市役所
- HP:https://www.city.kobe.lg.jp/
令和の時代に間違いなく進化するテクノロジーを積極的に取り入れながら、誰もが子育てしたい、学びたい、働きたい、住み続けたい街として選ばれるよう、子育て・教育施策とともに「まちの質」「くらしの質」を重視した施策の強化を図り、神戸を見違える街へと変革してまいります。
HP:令和3(2021)年、新年のごあいさつより引用
インタビュー者:藤原慎之輔様
導入事例
kintone
導入背景
元々役所ではクラウドサービスを使うことはあまりありませんでした。
業務改革、働き方改革が役所の大きなテーマとはなっておりましたが、現場主導で、特にITを使った業務改革の例はなかなかありません。例えば、マクロのスキルを持った職員個人が個人で業務改善することはありますが、その場合は引き継ぎが難しかったり、ITを使った業務改革が現場主導で動いていなかったので、なかなか順調とは言い難い状況でした。
そんな中、ITの主な取引部署である情報化戦略部がkintoneを試験導入してみたところ、実際に現場の特にITに詳しくなかった職員が効果を上げたことによって、その利便性から徐々に市役所内で使用される機会が増えることとなりました。
使用方法
民間企業においても車を管理、運用している事例が多いかと思うのですが、役所には「公用車」というものがあります。
私は以前、土木系の建設事務所の部署に所属していました。
この部署の役割は道路に異常があったり、公園の遊具が破損した際など、市のトラブルの通報があるとすぐに車に乗って現場に駆け付ける必要がありました。
公用車はそんなトラブルの起こった現場へ向かうために使用され、1つの部署で約30台の車を所有しています。
その公用車の運転日報や走行距離の集計等の作業に「kintone」を活用しました。
もう1つは、今の部署である西区役所に異動後、国勢調査に関する問い合わせで活用しました。
実は国勢調査は全国民対象の調査なので、市民からの問い合わせが非常に多く、5年前の国勢調査では職員が電話に追われることで、職員の残業時間が長くなってしまっていたという課題がありました。
2021年5月21日に私自身の人事異動があり、異動後所属の中でkintone使って国勢調査の職員残業問題を解決できないか議題が挙がり、実際にアプリを作ってみると大きな効果がありました。
課題達成
・運転日報や走行距離の集計
公用車の運用に係る運転日報は月に5千枚以上の紙を使っており、全ての紙1枚1枚にハンコを押印したり、その紙に記載された内容を全てエクセルに手打ちで転記して走行距離を集計したりと膨大な雑務が発生します。
それをKintoneを活用することによって、全てが電子決裁で行われ、必要となる紙が0枚になりました。
また、これまでエクセルの手打ち作業で行っていた走行距離集計も、kintoneにデータさえ入力しておけば自動で集計されるようになり、業務が圧倒的に効率化されました。
・国勢調査に関する問い合わせ
問題となっていた国勢調査の問い合わせの問題ですが、問い合わせは実は2種類あります。一つは市民からの問い合わせ、もう一つは調査員からの問い合わせです。
これらを解決すべく、要望の受付をkintone、web上で行うという提案をしました。
例えば、役所は9時‐17時のみ電話を受付けおり、時間内に電話をかけられない方も多くいます。また、人によっては電話はしたくないけど、電話番号しか掲載されてないから、仕方なく電話対応を利用している方もいます。
役所は9時‐17時の業務時間という縛りがありますが、webフォームを通じてなら24時間受付ができます。
世帯の方は老若男女色々おりますが、調査を実際に担当する調査員の数も私が所属している西区だけでも1,000人ほどの調査員が各世帯に回っています。 結果的に、調査員からの電話の数も非常に多くなっています。
例えば「調査のここの記入方法はこれで問題ないのか」「配り方はどうか」「事務用品が足りなかった」「調査資料が足りなかった」等です。 調査員の中には、メールでやり取りしましょうと言ってくれる方も多かったゆえ、webフォーム上から問い合わせをKintone化することにしました。
9月に国勢調査が始まって10月まで調査は続きますが、私が担当した西区だけではなくてその取り組みを神戸市で全区統一で行ったところ、その期間中、電話による問い合わせが約1万3千件削減され、その代わりに、約1万3千件の問い合わせがwebフォームを通じて行われました。
問い合わせについては5年前とは状況が変わってきており、kintoneによって大幅に効率化することができました。
kintoneを使って業務改善したい内容はほかにもあります。
今の私の担当は、選挙に関係する業務がいくつかあります。
例えば、一つの区に投票所が約50箇所あり、学校などの施設を選挙投票所として使わせてもらえるよう依頼文を作成します。今までは依頼文をワードで作成し、印刷、配布と全て手作業で業務を進めていました。
これをkintoneで全自動化し、一斉送信のみにすることを考えています。
他にも、選挙に従事する職員の確保もKintoneを利用しようと考えています。例えばKintoneで職員を募集し、その後自動的に担当を割り振る等です。
選挙は事務量がかなり多く、職員の残業時間が200時間近くなることがざらにあります。
神戸市では、行政区が9つに分かれており、それぞれの区に選挙管理委員会があります。その若手の担当同士でグループワーキングをして、kintoneをどの領域で活用していくか検討を進めているところです。
これからどんどんブラッシュアップしていって、職員の働きがいの向上や、残業時間をできる限り減らせるように取り組みたいと考えています。
良かった点
- 紙に頼らず管理できるのでコストが削減できた。
- 業務を効率化できた。
- ITに詳しくなかった職員でも効果を上げられるという垣根の低さが良かった。
- Webフォームを通じて24時間問い合わせを受け付けられるようになり残業時間が減った。
悪かった点
特になし。
Microsoft Power Virtual Agents
導入を検討中
kintoneとMicrosoftのpower virtual agentsを連携させて業務改善を行えないか、9つの選挙管理委員会の若手同士で検討しています。
予定される使用方法
例えば選挙において、「自分はどこの投票所に行けばいいんだろう」と疑問に思う方は少なくありません。
そんな際に、チャットボットを利用し、住所を記入するだけで該当する投票所を知ることができる、といった活用法を考えています。
わざわざ問い合わせをするのではなく、ホームページ上のチャットボットを通じて、質問を解決していくことで、問い合わせ件数の削減、及び疑問解決までの時間も大幅に減らすことが可能になるはずです。
この記事に登場したSaaS
kintone
キントーンは、あなたの「その仕事」に合わせた業務システムになります。日々の業務課題を解決し、快適なコミュニケーションを実現します。
出典:kintone公式サイト
Microsoft Power Virtual Agents
顧客や従業員のニーズに迅速に対応するために、大規模に、Power Virtual Agentsで構築したインテリジェントなチャットボットを使用します。コーディングは必要ありません。